事務長室から
ポッドキャストの楽しみ
東京多摩病院のロビーには7月上旬、入所者の手による七夕飾りも展示された。
前回はこの欄で、とりわけ日本政府系のデジタル施策について「何でこうなるの?」という批判を書きました。もちろん、悪口は言いっ放しになっては生産的ではありません。DX(デジタルトランスフォーメーション)関連では、専門家が切り込む、気軽でそしてとても役立つ解説番組がインターネット上に結構あるので、今回はいくつかご紹介したいと思います。ぜひ参考にしてください!
最近、私がはまっているのは、「ゆるコンピュータ科学ラジオ」(ゆるコン)というポッドキャストです。
ポッドキャストとは、インターネット上のラジオ番組みたいなもの。基本、音声のみですが、動画のユーチューブで同時配信しているものも多い。iPhoneなどスマートフォンをはじめ、パソコンでも「Podcast」アプリやSpotifyアプリなどで聞くことが出来ます。大抵は無料なので、大変ありがたいですね。
ユーチューブで視聴するのも良いのですが、学生時代のながら聞き勉強みたいな感覚を思い出すポッドキャストの方が私は楽しいです。
「ゆるコン」は、ITライターの堀元見さんと、出版社勤務の編集者、水野太貴さんの2人が進行します。ざっとタイトルを並べると、「なぜMicrosoft製品は嫌われるのか?」「個人情報を保護する時代は、終わりました」「学校のカスIT環境を集めました」――など。2022年の開始以来、配信数は230本以上に上ります。
例えば「日本最悪のDX失敗事例を調べました」は、戦後、写植機メーカーとして業界トップを誇った「写研」の盛衰を取り上げます。要は、あまりに業界シェアが大きかったので、1990年代に急成長したDTP(デスクトップパブリッシング=コンピュータ上の編集・製版)移行に乗り遅れてしまい、2000年代初頭には売り上げも最盛期の10分の1と激減。この間、有能な人材の流出、ワンマン社長による粉飾決算などもあって、没落に歯止めをかけることが出来なかったという話です。
大企業がその圧倒的な地位ゆえに、新技術を武器に参入してきた新興企業の猛追に対抗できないという「イノベーションのジレンマ」を地で行く事例で、トロント大学の経済学者・伊神満さん(喜多見の出身です!)の「『イノベーターのジレンマ』の経済学的解明」(日経BP社)と併せ読むと、どう対処すればいいのか戦慄を覚えます。いまだにエクセルの不自由なスタイルシート記入を強制する行政の方々には、「デジタル化はどうあるべきか」ぜひ参考にして欲しいのです。
「ゆるコン」は、デジタル技術に精通した堀元さんが、自称・機械オンチの水野さんにコンピュータ利用の基礎について、毒舌をもって教え諭すスタイル。堀元さんの舌鋒は過激に聞こえることもありますが、その多くは本質を突いていると私は思います。ぜひ一度、耳を傾けていただけたらと思います。
実はこの2人、先に始まった「ゆる言語学ラジオ」という姉妹番組も配信しています。「言語学」と聞くと一瞬、ウッと身構えますが、「ラーメン二郎の言語学」「徹底討論! 『結論から喋る』は本当に正しいのか?」など、こちらも目から鱗の内容で、お勧めですよ。
もう二つ、ポッドキャスト番組をご紹介します。
「rebuildfm」と「backspacefm」で、共に米国在住の日本人エンジニアらが運営するテック番組です。AIなどデジタル技術の最先端を走る米国の雰囲気がリアルタイムに分かる点がミソ。配信開始からrebuildが13年、backspaceが12年という老舗番組です。
自動運転のタクシーが西海岸では当たり前に走っていること、AIアプリの運用方法、テック企業の栄枯盛衰など、どれも日本に暮らしていては知り得ない様子を生々しく聞くことができます。もちろん、米国礼賛ではありません。が、コロナ禍の際などには「こんな対応方法もあるのか」などと、視野が広がる思いがしました。
やはり、様々な国・地域の具体例は格段に説得力がアップします。そして何より、情報のリアルタイム性がデジタル最大の強みだと思い知らされます。


